就労継続支援A型事業所「アイ・プラネット」代表・三村由紀子さんインタビュー

障害者の自立支援を行う事業所「アイ・プラネット」を経営するシャイニスタNo.041三村由紀子さん。 誰もが最後まで安心して暮らせる場所を作りたいという強い想いを持ち、挫けそうになった場面を乗り越えてきたその姿からは、学ぶことが多くありました。
シャイニスタ
三村 由紀子
三村 由紀子 (みむら ゆきこ)
就労継続支援A型事業所「アイ・プラネット」代表
シャイニスタNo.041 三村由紀子

なぜ、あなたは輝きはじめたのですか?

私には知的障害のある子どもがいるんです。
高齢の父に面倒を見てもらいながら、私自身は外に出て必死に働いていました。
だんだんと子どもの状況が悪くなって、父からの電話が仕事中も頻繁にかかってきて会社勤めが難しい状況でも、行政から受けられる支援がほとんどなく、福祉サービスの在り方に疑問を持つようになったんです。

もし私に何かあったら、この人たちはどうなるのか。
今のままでは最後まで幸せに暮らす方法がない。
それなら誰かが何かをしなければと思って、自分のできるやり方でそういう場所を作ろうと決めました。

三村由紀子

障害がある人の自立を手助けする!就労継続支援A型事業所「アイ・プラネット」代表・三村由紀子さん

三村由紀子 活動内容01
── 三村さんの現在の活動について教えてください。

2015年1月から就労継続支援A型事業所「アイ・プラネット」を運営しています。
施設利用者の定員が20名、ケアを受け持つスタッフが代表の私も含めて5名ほどの事業所です。

── 就労継続支援A型というのは、どういうものなのでしょうか。

障害者が病院での治療や自宅での療養を終えて社会復帰したいけれど、いきなり一般企業で働いたり、障害を持つ前と同じステージに戻ったりは不安という場合に、その手前で復帰に向けた準備運動をすることができる施設なんですね。
また、年齢や本人の希望などで一般企業への就職を目標としていない方は、事業所の従業員として作業の熟練者となっていただきます。
利用者には一般企業と同じように働いてもらいますが、定期的に面談を行ったり必要に応じて作業の種類を変更したり、その人の状況に合ったケアをする点が企業と異なります。
三村由紀子 活動内容02
私たちの事業所では障害の種類を限定しておらず、5日間の体験入所で一通り作業して無理なく一定水準の能力を発揮できて、本人の意欲があればどんな障害の方でも入っていただけます。
ただ、事業所で行ってもらう業務の性質上、知的障害の方は少ない傾向にありますね。
入所してもらったら、ネットオークションの出品代行や、事務代行、データ入力などの作業をしてもらっています。

── 事業を始める前は何をされていたのでしょうか。

高校卒業後すぐに最初の結婚をして主婦になりました。
子どもを産んで育てながらいろんなパートをしたのですが、家庭が安定していなかったこともあって、もっと稼ごうと30歳を過ぎてから生命保険の営業を始めたんです。
途切れる時がありながらも国内生保と外資系生保に勤めて、12年以上営業をしていました。

障害者を取り巻く現実を知って動き出した

三村由紀子 取材01
── 現在の活動を始めたきっかけは何でしょうか。

35歳の頃に再婚して生まれた二人目の子どもに知的障害があり、家族の立場から障害者福祉のサービスを知っていくうちに疑問を感じるようになって。
それで障害者福祉をよく知りたいと思ったことがきっかけです。

もう一つ、障害のある子どもがいる状況ではサラリーマンとして働くことが難しくて、起業したという点もありますね。

── 福祉サービスに疑問を持つようになった頃は、どういう状況にあったのでしょうか。

子どもの発達障害を軽くするには、仕事をセーブしてあちこち連れていってケアしないといけない。
けれど、育てていくためには収入が必要でもっと働かないといけない、という状況でした。
さらにその頃、高齢の私の父が同居することになって、より稼ぐ必要があったんです。
ある程度、父に子どもの面倒を見てもらえるようになったので、私は外に出て必死で働いていました。

けれど子どもの状態がどんどん悪くなり暴れることも増えて、仕事中も父から子どものことでSOSの電話が頻繁にかかってくるようになって、会社勤めを諦めなければいけなくなったんです。
それでそういう状況にあっても、行政から受けられる支援制度がほとんどなかったんですね。
行政側では手のかかる人がいるなら、家族が付ききりで世話をするのが当たり前という方針で。

もし父が動けなくなって、子どもの世話ができなくなったらどうなるのか。
逆に私に何かがあって、父と子どもを残していかなければならなくなったら、その後はどうなるか。
誰にも生活の面倒を見てもらえず、孤立してみじめに死んでいかなければいけないのか。

そう考えたときに、ものすごく悲しくなったんです。
贅沢できずとも、最後まで人に囲まれて幸せに生きていく方法がない。
それで今その方法がないのなら、誰かが何かをしなければ、と考えるようになりました。

── そこから施設を作ることを考え始めたのですね。

はい。ただ、自分が何かをしなければと考えながらも、当時の私は福祉のことをよく理解していなかったんです。
だからまずは障害者福祉を知って、自分ができる方法で何か事業をしようと思いました。
それでいろいろ調べていくなかで、就労継続支援A型というシステムがあると知りました。
三村由紀子 活動内容03

介護サービスをするという選択肢もありましたが、就労支援で利用者が少しでも稼げるお手伝いをする方が私に向いているなと思ったんですね。
私自身がずっと稼げるようになりたいと思って、ここまで来たというのもあったので。
そこから1年はやるかどうか悩みましたが、とりあえずやってみることにしたんです。

規定の変更で現場に生まれるジレンマ

三村由紀子 取材02
── これまでに転機となった出会いや出来事はありますか。

福祉施設の運用基準がどんどん変わっていくことの影響は大きいかもしれません。
今は、支援をするために必要な部分を削いでいく方向へ基準が動いているように感じます。

例えば、利用者は週5日、1日5時間働かないと要件から外れてしまうという規定があるんです。
けれど、もう少しゆるいところから始めて、まずは働く習慣を身に付けなければいけない人もいるんですよ。

そういう人には「5時間と言わないから、必ず毎日起きて会社に来るまででいいから出ておいで」と言ってあげるんです。
すると介護訓練給付金は削減され、施設運営が立ち行かなくなってしまう。
一人ひとりの変化に対応してあげることを是としないんです。

── 規定と現場の支援の間にジレンマがあるんですね。

そうなんです。
規模の大きい事業主さんでは多機能型の複合施設にして、A型で減算があっても同じ事業所内のB型でプラスを出せるようにしているところもあります。
もっとA型の事業所を増やすと、障害者の方にとってはいろんな職業経験ができ、その人に合ったトレーニングを選べる機会が増えるんですね。

それで、私たちの規模の事業所が続けられないシステムをなんとかしたいと思って、まずは近くのA型・B型の事業所に声をかけて、話し合いを始めたんです。
神戸以外の地域ではどういう活動しているのかも知りたくて、大阪の事業所を紹介いただいて話を聞きに行くこともしています。
他の地域で成果が出ていることがあるなら、それを参考に他の事業者や行政と話を進めようと考えているんです。

単に集まって話すだけだと文句や愚痴で終わってしまい、本来の目的からは逸れてしまうこともわかってきたので、目指す方向をはっきりさせて具体的な形を提案していこうということを、今まさに行なっているところですね。

経営者としての覚悟を試された最初の年

三村由紀子 取材03
── 今までに起きた最大の試練は何でしょうか。

事業を始めた最初の一年ですね。
天の神様から無理だからやめろと言われているんじゃないというくらい、覚悟を試される毎日でした。
周りの人からも、「よりにもよって、こんなこと聞いたことがない」と言われるほどのことがいくつか起きて…。

会社勤めと経営者では悩みや苦しみの質が違って、人との関わりが増えることで責任も重くなりプレッシャーがすごかったです。
お金の調達も大変だし、給与を払わないといけないし。
乗り越えた今は、以前の離婚だとかのしんどさが軽いものだったなと思うようになるくらいでしたね。

少し落ち着いて事業に注力できるようになったのは、事業所を開いて9カ月を過ぎてからでした。
保険会社の頃からの友人が入社してくれて、現場をまとめてくれるようになったんです。

── 二年目に入る前からは少し落ち着いてきたのですね。

そうですね。
ちょうどその頃から事業所の中も徐々に変わってきて、また違う問題も出てきました。
利用者さん達に本当に働くとはどういうことかを理解してもらう必要が出てきて、教育のやり直しをすることになったんです。

現場にいるスタッフは、そういう目的があって利用者に厳しく接しているんです。
そこへ私が外回りから帰ってきて利用者から「ちょっとしんどい」と言われると、状況も知らないまま「じゃあちょっと休憩する?」と言ってしまって。
「そんなこと言っちゃだめじゃないですか」とスタッフは怒りますよね。
三村由紀子 取材04
そういうことがあって、スタッフから「申し訳ないですが、社長はもう作業場に入らないでください」と言われてしまったんです。
ショックでしたけれど、でも気持ちは理解できたんですよね。
それからは作業所に行かず、私はより稼げる仕事を取ってこられるよう営業に徹することにしました。

── スタッフから率直に意見を出してもらえるのはとても大きいですね。

すごく大きかったですね。
言われたことで頭を切り替えられて、自由になりました。
それにそこまで言ってくれているんだから、信じて任せようと思いましたし。

そこから私も変わってきて、経営者として事業全体の方向性を見るようになりました。
ネットショッピングの出品代行をしていると、品物を預かった後も質問に答えるために別の場所に保管できず、作業所に置いておかなければいけないんですよ。
今は7000点ぐらいの物を管理しているんです。
それで事業所の広さが足りなくなってきていて、やりたいことを諦めたこともあったんですね。

今はそういった場所の問題も解消しつつ、現在来ている利用者より障害の重い人も働ける場所を作りたいと思って、複合型の施設にすることを考え始めているところなんです。

善意を持つ人がたくさんいると気づいた

三村由紀子 取材05
── 活動を通して新たに手に入れたものや変化はありますか。

まずは同じような事業主の方と知り合うことで、青臭いのかもしれないけれど、善意を持っている人というのは思っていた以上にたくさんいると知ったことですね。

あとは、人は基本的に人に役に立ちたいという心を持っているんだな、ということも最近よく感じます。
異業種交流会で知り合った社長さん達がとても応援してくださるのですが、「大丈夫?」という言葉だけでなく、実際の手助けであったり情報であったり、その後の行動があるので本当に応援してくれているのが分かるんです。
こちらのことをそこまで真剣に考えてくれていたんだ、と驚くくらいで。
これはすごく幸せなことだと思います。

今まで誰かを信じるときは、捨て身で何かを諦めないと信用できなかったのが、そのまま信用できる気持ちが生まれてきたんですよね。
人は苦手であまり好きじゃなかったけれど、最近は人が好きになってきました。

最後まで安心して暮らせる場所を作りたい

三村由紀子 取材06
── 今後の夢を教えてください。

障害のある方や高齢で自立して生活することが難しい人が、家族がいなくても最後まで安心して暮らせる環境作りをすることです。
今の福祉は地域包括といって、施設に入れるよりも地域コミュニティで暮らすことを模索する方向に進んでいます。
けれどトラブルが起きることもあり、うまくいっていない面もあるんですね。

施設に入れることを避ける必要はないと思うんです。
見方を変えればお世話する人の雇用も確保できるし、本人がケアを受けて暮らせることで家族も安心できる。
まずは安心して住める寝床の確保が大事なんです。
時間はかかっても、そういう場所を作っていきたいと思っています。

── 三村由紀子さんにとって夢とは
三村由紀子さんにとって夢とは

撮影/松浦静香
取材・文/Sachiko Kikutani

この記事のシャイニスタ

三村 由紀子
就労継続支援A型事業所「アイ・プラネット」代表
三村 由紀子 (みむら ゆきこ)
新しい行動に踏み出す事は派手で立派に見えるけど、派手なばかりが立派なわけじゃない。どのような状況にあっても「幸福感と生きている意義」が見いだせていれば良いのだと思っています。
シャイニスタNo.041 三村由紀子
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