給与はどうなる?育児休暇を男性が取得するメリット&デメリット

育児休暇を取りたいパパが増えている
厚生労働省の発表によると、2014年度育児休暇を取得した男性の割合は2.30%と前年度より0.27%上昇しました。
2020年の取得率13%を掲げる政府目標とはまだかなりの開きがあり、女性の取得率86.8%とも大きな差はあります。
一方で働く男性の6割以上は育児休暇取得を希望しているという生命保険会社の調査結果もあります。(注1)
最近では自治体の首長や企業の経営者が育児休暇を取得するというニュースも聞くようになり、男性の育児休暇への関心は高まっているのではないでしょうか。
そこで今回は、実際に男性が育児休暇を取得する場合の仕組みとその後の変化についてお伝えします。
(注1)ライフネット生命「育児休業に関する意識調査」
http://www.lifenet-seimei.co.jp/newsrelease/2013/4940.html
男性でも育休取得は可能です!
2009年育児・介護休業法が改正され、男性も子育てに関わりやすい社会を目指した新制度が2010年6月30日に施行されました。
「パパ・ママ育休プラス」制度とは
父母がともに育児休業を取得する場合、休業を取れる期間を延長するというものです。
父母が同時に取得する場合、父母が交代で取得する場合ともに適用され、最大で子供が1歳2か月になるまで取得が可能となります。
産後8週間は母体保護優先から妻は産後休業となり、育児休業は取得できません。
その間に妻に変わって育児休業を取得した場合、その後仕事復帰したとしても再度育児休業取得が可能となり、1歳2か月になるまで延長して取得できることになったのです。
(父母のどちらかが育児休業を取得する場合は1年以内が限度)
また妻が専業主婦であってもすべての父親が必要に応じて育児休業を取得できることになりました。
男性が育児休暇を取るメリットは?
我が子の側にいられる
一番のメリットは、子どもの成長を身近で見ることができるということでしょう。
子どもの健康診断や仲間づくりで地域とのかかわりも増え、子育ての知識や人脈が広がります。
仕事に生かせる
それによって親目線・消費者目線で物事を考えるようになり、仕事でのアイデアも広がるでしょう。
乳児の世話をしながら家事や他の家族の世話をすることにより、段取り力や観察力などの能力が高まり、家庭だけでなく、職場に戻った時に業務への取り組み方や部下や若手の指導においても役立つでしょう。
企業にとっても新たな能力を開発した人材として魅力に映るはずです。
男性の育児休暇取得事例が増えることで、育児や介護をしながら働き続けるモデル構築の必要性が高まり、無駄な残業をなくす業務改善や生産性向上のための施策等への効果が期待されます。
夫婦の繋がりが強まる
出産後自分自身の体の回復時期に、授乳や赤ちゃんのお世話をしながら家事や他の家族の世話もするとなると、妻の負担は大きいものです。
その時期に、夫のサポートがあることは精神的にも物理的にも助かるのです。
夫が育児や家事に協力的な家庭程、第2子を産みたいと思うという調査結果も出ており少子化改善や、女性の仕事の継続にも効果が期待できるでしょう。
デメリットにはどんなことがあるの?
育児休業取得に踏み切れない大きな理由が収入減への不安ではないでしょうか。
その間は収入がゼロになると思っている方も少なくありません。
収入が減る
実際には雇用保険に加入している場合は「育児休業給付金」を受給できるため、育休取得の180日間は取得前の給与の67%を、それ以降は50%を受け取ることができます。
この間は社会保険料も免除になっています。
従来の支給額は、育休取得後すべての機関で50%でしたが、2014年4月から180日目までは67%と引き上げられました。
(注2 支給額には上限・下限額がある)
父母どちらかが育児休業を取得する場合は一年が限度ですから、交代で取得し1年2か月分取得すると収入面でもお得だということです。
(注2)厚生労働省HPより
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000042797.pdf
職場へ対する不安
仕事を休んだ後本当に職場に戻る場所があるか不安を感じたり、スムーズに復職できるかどうかの心配があります。
企業側も男女ともに育児休暇取得者が重なることによる人手不足、一部の人材に業務の負担が増えモチベーションが下がることなどのデメリットがあります。
周囲の理解を得るために必要なこと
自分自身だけでなく家族や職場の理解を得て、スムーズに育児休暇を取得するためには事前準備が必要です。
育児休業取得を考えたらまずは上司に育児休暇取得を申出て、仕事の引継ぎや復職後のキャリアについて話し合っておきましょう。
上司の理解を得るには?
休むことでキャリアダウンになるのではないかと心配する声もあるかもしれません。
その際は他社の事例や長いキャリア人生の中での数か月、ということを説明しておきましょう。
他社の事例を書籍や団体や自治体が主催する、パパ向けセミナー参加等(注3)で事前に情報収集し、上司に説明するのも効果的です。
休暇中は定期的に上司や同僚と連絡を取り、情報収集をして復職時に業界や社内の流れについていけるように準備しておきましょう。
自分のキャリアを再考する機会、職場の業務改善の機会としてとらえ以下のような働きかけをしておくとよいでしょう。
- 具体的に復職後の大まかな希望を伝える
- 休業中は若手に業務を任せて成長を促す
- 部署の業務の見直しをして業務分担を改善する
会社全体への働きかけにも
独身でも親の介護で将来休暇を取る可能性もある時代です。
周囲にその時の働き方のモデルを見せる機会だと考えて取り組みましょう。
育児・介護休業法では育児休暇取得等を理由に事業主は不利益な取り扱いをしてはいけないと明記しています。
休暇取得を機会に降格などの扱いを受けた場合は自治体などの労働相談窓口へ問合せましょう。
家族とできる事前準備
家庭の中ではどの時期に夫と妻のどちらが休むか、家事の段取りはどうするかなどを話し合っておきましょう。
保育園等の預け先、緊急時の対応などは妻が妊娠中から一緒に調べておきましょう。
また、親世代の中には男性が育児をすることに抵抗を持つ方もいます。
夫婦で一緒に自分たちの思いを伝えておきましょう。
(注3)NPO法人ファザーリングジャパン
参照元:厚生労働省HP「イクメンプロジェクト」
島谷先生の伝えたいこと
妊娠・出産時期の関わり方で、夫婦関係は大きく変わる
「夫婦の愛情曲線の変遷」の調査(注4)によると、妻の夫への愛情は出産を機に急減するそうです。
体を張って産んだわが子への愛情が一気に高まり、夫への愛情からとってかわるのです。
もしそのままにしていたとしたら、夫への愛情は低迷したままになるということなのです。
育児に一緒に取り組む、産後の体の回復や授乳で大変な妻に変わって家事を担当する等、夫側からの積極的な働きかけはは、自分自身や家族のあり方の将来にも大きな影響を与えます。
また「子供が大きくなってから子育てに関わろう」と思っていても、小さいころから関わりがなかった父に対しては子供も距離を置くものです。
さあどのように関わっていきますか?
(注4)
東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 渥美由喜著「夫婦の愛情曲線の変遷」
http://www1.tokyo-womens-plaza.metro.tokyo.jp/Portals/0/jigyou/wlb/curve.html
この記事のまとめ
- 育児・介護休業法の改正により父母共育児休業を取得する場合は、子供が1歳2か月になるまで取得可能
- 育児休業給付金の支給額の割合が上がり、180日目までは給与の67%が取得可能(上限額あり)
- 職場に育休取得を申請する際は、取得中の引継ぎや復職後のキャリアについても相談する
(自分のキャリアを再考する機会、職場の業務改善の機会だと捉える)
記事を書いた人

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