配偶者控除の見直しでどう変わる?得する働き方を専門家が提案!

配偶者控除の見直しで主婦の働き方はどう変わるのか、どのような働き方をすればお得になるのかを、お金の専門家が教えます。 見直し制度はいつからスタートするのかから、どのようなメリット・デメリットがあるのかまでをしっかり理解して、賢く働きましょう!
お金
福一由紀
福一由紀 (ふくいち ゆき)
ファイナンシャルプランナー
配偶者控除 見直し

配偶者控除とは

主婦にとって身近な制度「配偶者控除」が見直されます。
今、パートなどで働いている主婦はもちろん、これから働こうとしている人にとって、とても重要なこの制度。
内容や今後の変わり方をしっかりと確認しておきましょう。

配偶者控除とは、所得税や住民税での制度です。
所得税や住民税は、個人が1年間で得た所得にかかる税金。所得税は国に、住民税は都道府県や市町村に納めています。

この所得税と住民税の税額は、個人の所得額だけではなく、その人の事情を考慮して決まっています。
例えば、医療費をたくさん払った人には「医療費控除」、特定の生命保険に加入していたら「生命保険料控除」、親などを扶養していたら「扶養控除」などが適用され、それぞれ税額が安くなる仕組みです。
これを「所得控除」(所得からいくらかを差し引くという意味)といい、所得控除がたくさんあるほど納める税額が減っていきます。
この所得控除の中に「配偶者控除」があります。
103万の壁

配偶者控除とは、生計が同じで年間の合計所得が38万円以下(パートなどの給与のみの場合は年収103万円以下)の配偶者がいれば適用されます。
つまり、専業主婦もしくは年収103万円以下のパート主婦などを妻とする夫であれば、その夫の所得税が安くなるというもの。
これがいわゆる「103万円の壁」といわれるものです。

配偶者控除の見直し内容

この配偶者控除の見直しが政府で議論されてきました。
高所得世帯の専業主婦を優遇している、この配偶者控除の範囲内になるよう働き方をセーブする主婦がいる、フルタイムで働く主婦と比べると不公平……などの意見がでていたためです。
当初は、配偶者控除を廃止して、夫婦控除なるものを創設しようという案もありましたが、配偶者控除の上限引き上げを行うという結果に落ち着きました。
年収上限引き上げ

政府は2017年2月3日、2017年度の税制改正の関連法案を閣議決定。
配偶者控除を見直し、配偶者(妻)の年収上限を103万円から150万円に事実上引き上げます。
パートの主婦がより長く働きやすく出来るようにとのことから、このような改正に決定しました。

ただし、上限が150万円まで引き上がり従来通りの控除額となるのは、夫の年収が1120万円以下の場合です。
1120万円を越えると控除の適用が減り、さらに1220万円を越えると配偶者控除の適用外となります。

新制度のスタートはいつから?

この新制度、2017年度に改正され2018年から適用されます。
つまり、配偶者控除が適用されるパートなどの配偶者の給与収入の上限が、2017年12月までは103万円、2018年1月からは150万円になるということです。

配偶者控除の見直しで変わること

この配偶者控除の見直しで、パートの主婦の働き方、考え方が変わることになります。
年収103万円を越えると、「夫の所得税が増えるので働き方をセーブしよう」「103万円までにおさえよう」と働き方をセーブしていた主婦が多くいました。

まずは、この103万円に抑えるというのがなくなり、103万円が150万円となります。いわゆる「103万円の壁」が「150万円の壁」になるということですね。

主婦が得する働き方

それなら、今まで103万円に抑えていたパートの働き方を150万円まで働こう!と思ったあなた、ちょっとまってください。
まだ、気にしておかないといけないことがあるのです。
それは社会保険(国民年金、健康保険)の壁です。
130万の壁

これは、夫が会社員や公務員の方のみの話です(夫が自営業者の方などは関係ありません)。
夫が会社員や公務員の場合、妻の年収が130万円未満であれば社会保険料の負担がゼロとなります。
具体的には、国民年金は第3号被保険者に、健康保険は被扶養者となり保険料を支払わなくていいのです。

この社会保険料の負担は大きく、例えば国民年金(第1号被保険者)の保険料は、1か月1万6490円(平成29年度)。
年収130万までであれば、この保険料を支払うことなく年金に加入できているわけですから、これだけでもかなりの差となるわけです。
これが、いわゆる「130万円の壁」です。

また、2016年10月から「106万円の壁」もできています。
これは、パートなどの短時間労働者(学生は対象外)でも社会保険に加入する範囲を広げようというものです。
具体的には、以下の条件が満たされれば、パートでも勤務先で社会保険(厚生年金、健康保険)に加入することになります。

  1. 労働時間が週20時間以上
  2. 1カ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上
  3. 勤務期間が1年以上見込み
  4. 勤務先が従業員501人以上の企業

となると、いくら年収130万円までに収入をおさえて夫の被扶養者になろうと思っていても、年収106万円を越えると自分の勤務先の社会保険に加入する(保険料を自分で負担する)ことになる場合があるということですね。
パート 社会保険

この保険料の負担がけっこう大きなものになります。
保険料は給料によって決まります。例えば、厚生年金保険料の本人負担分の保険料率は9.091%(平成28年9月〜平成29年8月分)。
つまり、給料の約9%が年金保険料として引かれてしまうということになります。
これにプラスして健康保険料も負担します(健康保険料は加入する健康保険によって異なります)。

この社会保険の壁に加えて、「130万円の壁」「106万円の壁」も考えて、働き方を考えていかなくてはいけません。
得をする働き方を考えるのなら、まずは自分に「130万円の壁」「106万円の壁」があるかどうかを確認しておきましょう。

【夫の立場別】得する働き方まとめ

夫が自営業者などで、そもそも「130万円の壁」「106万円の壁」がない場合
所得税の「150万円の壁」だけを意識しましょう。
今まで103万円に抑えていたのなら、150万円まで働いてもいいでしょう。
とはいっても、150万円の壁を越えたからといって、世帯収入が減るわけではありません。
働きたいだけ働いて収入を得るのが一番得する働き方といえるでしょう。

夫がサラリーマン、公務員の場合
「130万円の壁」「106万円の壁」を超えると、自分自身の社会保険料の負担がでます。壁をこえてしばらくは、世帯収入が減ることになります。
ただし、年収160万円あたりを超えると世帯収入は確実に増えていきます。

ということで、主婦が得する働き方の結論としては、「130万円の壁」「106万円の壁」までに抑える、もしくは160万円以上働くかのどちらかですね。

主婦が損する働き方

主婦が損をする働き方としては、夫がサラリーマン、公務員の場合で、所得税の年収「150万円の壁」だけを考えていた場合でしょう。
損する働き方

配偶者控除を受けるための上限が103万円から150万円になったということで、働く時間を増やし年収130万円を越えてしまった時、この場合社会保険(国民年金、健康保険)に自ら加入しなくてはいけません。
保険料負担は大きく、働いて増えたお給料以上に支払う保険料が高額になるでしょう。

「106万円の壁」がありそれを超える場合、自分で社会保険に加入して手取り額が減る場合があります。
これも今だけを見ると「損」ともいえますが、将来の老齢年金が増えるなどのメリットもあり、損得どちらともいえないというのが実情です。
ただ、今の手取りが減るということでは、106万円の壁がある人にとっては、106万円を越えるのは損ともいえるかもしれません。

これらのパターン以外では、あまり損をするということを意識しなくてもいいでしょう。
働いた分以上に何かがひかれて損をするという事態はないと考えてください。

「壁」を意識して働くことのメリット・デメリット

配偶者控除の新たな「150万円の壁」ですが、この壁を意識して働くメリットはないといえるでしょう。
夫の所得税が増えたとしても、パートでの増収分のほうが多くなり、世帯収入が減ることはありません。

所得税の150万円の壁は、意識せずに働くのがいいでしょう。

会社側はどう変わるのか

専業主婦などの配偶者がいると家族手当などを支給する企業があります。
この手当が支給される条件として、所得税の配偶者控除が適用されているかどうかとしている会社が多いようです。
なので、今までは「103万円の壁」として、所得税と会社の家族手当の2つという考え方もありました。
この家族手当の適用を、所得税の改正とあわせて150万円に上げる動きや、この家族手当そのものを無くす動きも出ています。

主婦の社会進出は促進される?

今回の所得税の改正は、主婦の社会進出の促進をうたったものでした。
しかし、実際には社会保険の壁があり、あまり意味がない改正だったのではと思います。
税制、社会保険ともに改正をしていかなければ、主婦が本当に働きやすい環境というのは出来ないのではないでしょうか。

広い視野で働き方を考えよう

2018年から適用される配偶者控除「150万円の壁」ですが、あまりこの壁を意識して働き方を考えることのないようにしたいものです。
自分自身に「130万円の壁」「106万円の壁」があるのかどうかを意識して、総合的に働き方を考えることが大切です。

記事を書いた人

福一由紀
ファイナンシャルプランナー
福一由紀 (ふくいち ゆき)
女性ならではの視点を大切に、生活の中で生まれるマネー情報をわかりやすく解説!メディア出演やマネーコラム執筆等でも活躍中。
配偶者控除 見直し
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