【不妊治療後の養子選択】養子縁組の考え方や心構えのヒント

妊娠希望年齢が高齢化する現在、不妊治療を受けても努力が実らずに産みたくても産めない女性も増加し、最近は養子縁組や里親に対する関心度が高まっています。 そこで養子縁組や里親を考える人に向けて、ここではその考え方や心構えなどについてご紹介します。
妊娠・出産
永森咲希
永森咲希 (ながもり さき)
不妊カウンセラー
不妊 養子

不妊治療を終わらせた方の中には、それでもやはり子どもを持ちたいという気持ちが強く、養子縁組や里親を考える方もいます。
そう思った時から考えたり準備を始めたりするのではなく、早い段階からどのような心構えや準備が必要なのか、知っておくといいでしょう。

その時は養子や里親に関心がなくても、状況によって気持ちが変わることがあります。
そこで今回は、養子縁組や里親に必要とされる意識や、養子縁組に関する基本情報などをご紹介します。

不妊ゆえの「養子」という選択

夫婦 会話

まずは自分(夫婦)の意識を確認

我が子が欲しいという気持ちで長年治療を続けてきた方々が治療をやめ、子どもをあきらめると、大きな喪失感に見舞われ、ずっと目標にしていた「子を持つ」という強い観念を頭から切り離せなくなる方がいます。

「その喪失感を埋めるために」「捨てきれない目標だから」といった思いから、なんとか子どもを得る方法はないかと養子縁組に辿り着く方がいます。
なかには、「夫婦仲があまり良くないから子どもでもいれば」「どうしても跡取りが必要だから」ですとか、「周囲はみんな働くママ。自分もどうしてもママをしたい」「子どもがいないと幸せな家族に見えない」などと、子どもの存在を自分の(自分たちの)付属品のような感覚で捉えている方もいます。

また「老後が寂しいから」という理由で養子を望む方もいます。
こうした理由で養子を望む場合、その夫婦は子どもを愛情豊かに育てていけるでしょうか。子どもの幸せを考える気持ちはどこにあるのでしょう。

最初はわからなくても、養子に迎えた子どもに障害や病気が出てくる場合もあります。
どんな人も健やかな命を望むのは当然ですし、人によっては「苦労を重ねた不妊治療でも実りがなく養子を得たのに、その子に障害があってまた苦労するなんて、受け入れられない」とおっしゃる方もいます。

ですが、自分の子どもを出産してその後に障害がわかった場合はどうでしょう?
その夫婦は大きなショックを受けるでしょうが、少しずつ現実を受け入れ、その子の幸せを願いながら子育てをされるでしょう。

障害が原因でその子を捨て、子育て放棄する人の話しはまず聞きませんよね。親になるということは、「その子のすべてを受け入れる覚悟を持つ」ということなのではないでしょうか。
養子縁組でも同様の気持ちを持てるかどうか。

不妊治療をやめてから養子縁組を希望される夫婦の年齢は、どうしても高くなりがちです。
人をひとり育て上げる努力と苦労は並大抵のものではない上、子どもへの告知の問題や思春期の問題等々、心も体も子どもの生涯と向き合う力、エネルギー、覚悟が必要になります。

もちろん「子どもが欲しい」「子育てがしたい」という純粋且つ切実に願う気持ちも大事ですし、こうした心情がなくてはできないことではありますが、「欲しい」という気持ちだけでも「育てたい」という気持ちだけでもなく、「子どもを幸せにしたい」という思いと「受け入れる力」が必要だということでしょう。

そして、自分たちに子どもができなかったから即養子ではなく、「どうして自分たち夫婦は他人の子どもをも必要としているのか」について夫婦ふたりでよく考えてみる時間が大事です。

養子について考える時期と行動するタイミング

考えるタイミング

1冊持っておくと役に立つ本

インターネットから様々な情報を引き出すことも悪くはありませんが、信用できる情報を得るために、細部に亘る情報が細やかに説明されている本を1冊持っておくといいでしょう。

「子どものいない夫婦のための 養子縁組ガイド ~制度の仕組みから真実告知まで~(著者:吉田奈穂子 / 明石書店)」は、実際に養子を迎えられ、里親制度の啓発活動に携われていらっしゃる吉田さんが書かれた本で、制度のしくみから将来子どもにどんな風に告知するのがいいのか、といったことまで幅広い情報が提供されています。

また養子を迎えられた方々の体験談も数多く紹介されていますので、あれこれネットで情報を探している方にとっては、大きな助けになる1冊だと思います。

制度を知ろう

  • 養子と里親って違うの?
  • 養育里親ってなに?
  • 普通養子縁組と特別養子縁組って?

しばしば耳にする単語であっても、実際の意味を理解している方はどれくらいいるでしょう。まずそのしくみについて学ぶことが必要ですよね。

以下は、上記の吉田さんの本からの抜粋です。

里親制度とは、さまざまな事情で家族と離れて暮らす子どもたちが家庭的な環境で健やかに育つための制度です。
里親制度は「児童福祉法」という法律を拠り所として、都道府県が運用しているので、地域によって多少運用に違いがあります。

児童相談所が保護した子どもに家庭が必要だと判断した場合、子どもは里親委託されます。里親に委託されている子どもを委託児童といいます。
児童相談所は児童福祉法に基づいて都道府県に設置されている子どもに関する相談援助機関です。

里親にはいくつかの種類があり、おもなものとして、養子縁組前提に子どもを迎える養子縁組里親と養子縁組をしない養育里親があります。
養子縁組里親は、一定期間、子どもを育てたあと、家庭裁判所に養子縁組の申し立てをします。

そして、家庭裁判所の調査、審判を経て養子縁組が確定すると、里親の立場が養親に変わります。
養子縁組の種類は、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があり、それは「民法」で定められています。
特別養子縁組では、生みの親と子どもの法律上の親族関係が終了し、養親が子どもの唯一の親となります。

一方、普通養子縁組では、生みの親と子どもの法律上の関係は終了せず、子どもにとっては法律上、生みの親と養親の2組の親が存在することになります。

養子縁組里親が前提としているのは特別養子縁組がほとんどですが、迎える子どもの年齢によっては、普通養子縁組の場合もあります。
特別養子縁組では、子どもの年齢が縁組の申し立て時に6歳未満でなければならないからです。

抜粋元:吉田奈穂子著『 子どものいない夫婦のための 養子縁組ガイド ~制度の仕組みから真実告知まで~』(明石書店、2015年)22頁

上記は、本に記載されている情報の極一部ですが、しくみの基本がわかりやすく説明されています
本で読んでも実態を具体的に把握することはなかなか難しいので、研修会や勉強会、体験者の発表会やイベント等に自ら足を運んでみたり、乳児院や児童養護施設でのボランティアなども経験してみたりするのもいいでしょう。

色々な経験

親の年齢について把握を

養子縁組は、行政機関である児童相談所で里親制度(「児童福祉法」という法律に基づいた制度)のもとに実施されるケースと、民間の養子縁組団体において実施されるケースがあります。

どちらの機関を検討するにしても、年齢の条件についての知識は事前に知っておくべきことのひとつです。
東京都の「養子縁組里親の認定基準」で対象となっているのは、25歳以上で50歳未満の婚姻している夫婦ですが、この認定基準は自治体によってさまざまなようです。

養子縁組を前提とした里親の条件について、「日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト」のホームページでは以下のように説明されています。

平成23年3月に出された厚生労働省の里親委託ガイドラインでは、養親の年齢について、「子どもが成人したときに概ね 65 歳以下となるような年齢が望ましい。
子どもの障害や病気は受け止めること、養子縁組の手続き中に保護者の意向が変わることがあることなどの理解を確認する。」と書かれています。
つまり、子どもと養親との年齢差は45歳以下ということが推奨されています。

引用元:http://happy-yurikago.net/2014/12/255/

民間の養子縁組団体では、25歳~46歳とか、夫が46歳で妻が43歳以下など、年齢の制限を明確にしているところもありますので、よく調べておく必要があるでしょう。

不妊治療を終え自分の子どもを持つことをあきらめ、その現実を受け入れることに時間を費やしていると、養子を迎える年齢制限をも越えてしまうことがありますので、こちらも「遅かった」という事態にならないように、早い段階から“考えてみる時間”を持たれるといいでしょう。

養子について考え始める時

考え始める時期

私が43歳で不妊治療をやめた後、自分の将来について少し落ち着いて考えられるようになるまで約2年の歳月を要しました。
「我が子を抱きたい」「家族が欲しい」「子どもを育てたい」と一喜一憂していた不妊治療の時期を経ると、子どもを育てたい気持ち、人の成長に関わりたい思いの方が強くなっていきました。

そんな頃、父がある方からの写真付きの年賀状を私に見せました。
小学校3年生くらいの男の子と幼稚園くらいの女の子が、向日葵のように明るくきらきらした満面の笑顔でこちらを向いていました。
「可愛い!」思わず見入ってしまった私に、父はこの子どもたちが養子であることをおしえてくれました。
「結婚っていうのは赤の他人と一緒になって家族をつくっていくだろ。自分たちの子どもでなくても、いい家族をつくれるんじゃないか?」

それから私たち夫婦は、児童相談所から話を聞いたり、体験者の講演を聴きに行ったりして、すっかり子どもを迎え入れる気持ちになっていました。
ですがある時、青少年が人を殺めてしまったニュースを耳にし、ふと「養育した子どもがこういう事件を起こしてしまったら、『やっぱり私たちの本当の子どもじゃないから』って思わないだろうか」とか「ちゃんと育てられるだろうか」など次々と不安が出てくるようになったんです。

昨日は不安でいっぱいだったけれど、今日は「やっぱり大丈夫。いい家族がつくれる」と自信を取り戻したりといった風に、日毎に気持ちや感情が変わり揺れ動くようになりました。
そして結局私たち夫婦は、里親になって養子縁組する話に関しても、勇気と自信が保てずあきらめる結果に終わったのです。私が45歳の時でした。

私がその時思ったことは、治療をしている時から子どもを持てなかった場合の選択肢、養子縁組について、少しずつでも情報を得たり考えたりしていれば・・・ということでした。

誰でも我が子が欲しいにきまっています。
ですが高齢で妊娠を望む場合には、つい見ないようにしてしまう「難しいかもしれない」という現実についても、ちゃんと意識することが大事なのかもしれません。
難しいことですが。

治療をしている時から養子の情報について聞く耳を持っていたら、違った人生を歩んでいたかもしれません。
その時は現実的な話と受け入れられなくても、ふとした瞬間に方向転換をしていたかもしれませんし、43歳であきらめた後すぐに勉強会などに出向き新たな経験を重ねていれば、45歳の時のように心揺れず子どもに巡り合えていたかもしれません。

幼児虐待や死亡といったニュースを見ると、いたいけなその子の最後に見た光景を想像し涙が溢れます。
そしていまだに「どうしてうちの子に生まれてきてくれなかったの?」と心が疼きますね。

記事を書いた人

永森咲希
不妊カウンセラー
永森咲希 (ながもり さき)
自身の不妊治療や子どもをあきらめた経験を綴った書籍を出版。不妊の悩みや葛藤を抱える人々の心に寄り添うメンタルケアが評判。
不妊 養子
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