不妊治療の諦め時はいつ?妊娠の諦め方について考えてみよう

不妊治療を長く続けるなか、妊娠の諦め時や諦め方に迷うときの対処法について、自らも不妊治療の経験をもつ不妊カウンセラー・永森先生がアドバイスします。 妊娠を諦める時をどう捉えたらいいのか、そのタイミングについて考えることで、その後の人生が変わってくるかもしれません。ぜひ一緒に考えてみませんか。
妊娠・出産
永森咲希
永森咲希 (ながもり さき)
不妊カウンセラー

不妊治療を終わりにするということは、自然妊娠が難しいご夫婦にとって「子どもを諦める」意味と直結します。
希望を持って治療を続けている方にとって、諦め時を考えることはとても辛いことです。

タイミング治療から人工受精、体外受精とステップアップした治療を長く続けていると、妊娠・出産・子育て以外の人生は考えられなくなる場合もあります。

残念なことに、女性が妊娠するのにはタイムリミットがあります。
こればかりは生物学的に無視できない事実。
35歳を過ぎると極端に妊娠力が落ちていきます。
タイムリミットが近づくにつれ、「本当にこのまま治療を続けていいの?」と疑問に思い始める自分に気づく方も多いでしょう。

そこで今回は、諦めたくない気持ちを持ちながらも、「もし諦めなくてはならなくなったとしたら、その先のことが不安」という悩みを抱える方への対策をご紹介。
妊娠の諦め方や諦め時について触れていきます。

妊娠の諦め方と諦め時

あきらめるタイミング
子どもが欲しいという気持ちに変わりはなくても、心身の状態や年齢、生活状況、周りの環境など、年月を経るごとに自分や自分をとりまく状況は変化していくものです。

そうした変化にともない、不妊治療の終結を考えるときに一番の鍵となるのが、妊娠を諦めるタイミングかもしれませんね。
妊娠の可能性が少しでもある限り、治療を続けたいという思いに固執してしまいがちなのは、女性として本能的なものでしょう。
難しいことですが、そのような思いに固執するのではなく、子どもがいない人生を豊かにする過ごし方に目を向けることや、これまで一緒に頑張ってきたパートナーとの夫婦関係を大切にする視点も重要です。

それぞれの事情に合った方法で、不妊治療を卒業するタイミングを考えてみましょう。

心理的なダメージを極端に受けないようにする方法

我が子を産み、抱き、育て、家族になるというささやかな希望は、どの女性たちにとっても本来“叶わぬ夢”ではなく、身近な望みのはず。
そんな望みを持ちながら頑張って治療を続けてきた方々にとって、治療の終了を決断するという選択は大変酷なことであり、苦しい選択になるわけで、強い抵抗を感じる方も多くおられます。

心のダメージを少なくする
そこで、ひとつわかりやすい例をあげてみましょう。
みなさん自身を飛行機に例えてみたいと思います。
今みなさんは、目的地(妊娠)に向かって、希望を持って飛び続けていらっしゃる状態です。
ですが、もしなかなか目的地に着けないとしたら。今持つ燃料で、このままずっと飛び続けていられるでしょうか。
目的地につけないまま、進路変更もしないまま、突然燃料切れになったら、あなたの飛行機はどうなるでしょう?

突然の着陸ですから、ハードランディングになることが予想されます。ハードランディングとは、硬着陸といって逆噴射なしの、地面に叩きつけられるような着陸。
大きな衝撃のある着陸になるとすると、機体がどんな影響を受けるかは予想がつきますね。

それを避けるのがソフトランディング。「緩やかに降下する衝撃の少ない着陸」、つまり軟着陸の意味です。目的地に行けず、燃料も減ってきたら・・・。
とても辛いことですが、目的地に辿り着けそうもないことを「自覚する」ということ、そして、自分なりに次に行きたい場所、行けそうな着陸地点を模索するということが、ソフトランディングに繋がる第一歩ではないかと思います。
ハードランディングをしてみなさんの機体を壊してしまうわけにはいきません。なぜなら、みなさんの人生はこの不妊治療のステージで終わりではなく、まだまだずっと続くからです。

自分が目指した目的地に着けない着陸は、どんな着陸でもダメージはあります。
ですが、そのダメージを極力少なくするには、辛くても目的地に着けそうもないという「自覚を持つ」こと、そしてどこになら着陸できそうか、周囲を見渡してみる時間を持つことが大事なのではないでしょうか。

考えやすいタイミング

指標とタイミング

私自身治療中、治療をやめることについては、いつも頭の片隅にあった気がします。
私にとって治療をやめるということは、すなわち子どもを諦めるという意味でしたから、そのことを考えるのが怖かったというか、意識になくはないのに頭の隅においやっていたように振り返っています。
「いつかやめなくちゃならない時がくるのかな・・・」とか、「このままできなかったら、いつやめることになるんだろう」「もうやめるべきなのかな・・・」等々、治療の終盤はそんな思いを抱えながらも、諦められずにますます治療に執着した時期もありました。

どんなご夫婦も、不妊治療を始める背景は共通しています。「子どもが欲しいのに自然にできないから」ですよね。
一方、治療をやめるその背景はご夫婦によって異なり、年齢的なもの、金銭的な問題、ご夫婦の関係性の変化、精神的な疲労、現実の受け入れ等々さまざまです。
6年間なかなか治療をやめられなかった私がやめる決断をしたのは、あることがきっかけで治療を続けることが大河の流れに逆らうようで「怖い」と思うようになったためです。
その結果、大きく舵取りをし、治療をやめるという方向へと転換しました。

年齢、治療費、夫婦の意思等すべての要素において納得できるのであればよいですが、なかなかそうスムーズにはいきません。
お金の心配はないのに高齢のために卵がうまく育たなくなってきたとか、まだ治療ができる年齢なのにこれ以上治療費を捻出できないとか、自分はまだ治療を続けたいのに夫がもうやめたがるとか、またその逆もあります。
ホルモンのバランスや持病などにもよりますが、一般的に不妊治療は、生理があって希望をすれば病院によって高齢になっても治療の継続が可能です。
ドクターも「もうあなたは無理です」とははっきり仰いません。
そのことによって、ずるずると長期間治療を続け、「やめ時なのになかなかやめられない」「どうやめていいのかわからない」と、やめるにやめられないご夫婦が増えているのです。

ですので、ご夫婦の間でなんらかの指標を持つといいでしょう。
ご夫婦で決めた指標はご夫婦の判断。自分たちの判断に沿った流れで決断したとしたら、それは納得もしやすい。
たとえば、「治療費はxxx円までとする」とか「あとx回体外受精をしたら」とか。
また「『もう疲れた。いつまでやったらいいんだろう』という気持ちに、この先3回悩まされたら」等ですね。
この指標を決めるのに、おふたりで多くの時間を費やされるといいでしょう。この時間が後になってボディーブローのように効いてくるはずです。

自分をカモフラージュする諦め方

考え方を変える方法

どうしても区切りをつけられないという方もいらっしゃると思います。そういう方は、明確に区切りをつけず、一旦治療を「お休みする」こともひとつの方法だと思います。

この日で終わりと決めず、また逆にいつ治療を開始するということも決めず、長いお休みのような感覚でフェードアウトしていく。
いつでもまた治療を始められると自分に対してカモフラージュしながら、他に目を向ける時間を増やし、辛い治療から自分を遠ざけていくという方法です。

治療を受けることが主たるライフワークになり、思い切って治療をやめられない方は、こうした方法もいいかもしれませんが、明確に区切りをつけないと新たな1歩を踏み出せないという方もいらっしゃいますので、ご自分に合った最終章を考えることをお勧めします。

「豊かな人生」につながる選択を

気持ちの切り替え

還暦まであと何年?

不妊治療は、妊娠の可能性がある限りやめたくないという方たちもいますが、たとえば40代後半まで治療を続けて、はたしてそれが本当に充実した人生と言えるかどうか。
こうした年齢になってから人生を再構築するのは大変ですし、実際50歳近くなると還暦まであと10年しかないわけですよね。その状態が果たして豊かといえるかどうか。
その点をぜひ考えていただきたいですね。

不妊治療を続けている最中でも、「どういう結果になっても、治療後の人生を豊かに生きよう」という気持ちを持つのは大切なことです。
子どもの有無にかかわらず、ひとりひとりこの世に生まれてきたこと、その命と人生はかけがえのないもののはず。
そして子どもの有無はその人の人間性とはまったく関係がないものです。
どうか、不妊治療に固執し過ぎず、人生を切り替えるタイミングを見失わないようにしていただきたいと思います。

記事を書いた人

永森咲希
不妊カウンセラー
永森咲希 (ながもり さき)
自身の不妊治療や子どもをあきらめた経験を綴った書籍を出版。不妊の悩みや葛藤を抱える人々の心に寄り添うメンタルケアが評判。
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