葉酸の効果 – 妊活・妊娠中の効果と健康・病気予防の効能

妊活中の女性に注目されている葉酸ですが妊娠や赤ちゃんだけでなく、男性や中高年の方にも大切な効果が!栄養学の先生が研究結果に基づいた【葉酸の効果】について紹介しています。
葉酸
源伸介 (みなもと しんすけ)
東大阪大学短期大学部教授

葉酸の三大効果とは

葉酸は妊娠期に必要な栄養素として認知度が高まっていますが、妊娠期に必要なだけではありません。
妊娠期以外にも効果があることから妊娠している時や女性だけでなく、男性や中高年になっても不足しないように摂取することが大切です。

1.細胞の再生

DNA・RNAの合成や細胞分裂、増殖を正常に行う役割があります。
ミス無く細胞やDNAをコピーすることでガンや障害が発生する事を防ぐことができます。

2.血液内の赤血球の生成

2つめは血液内の赤血球の生成です。
葉酸はビタミンB12と共に赤血球を作る役割があり、造血ビタミンと呼ばれています。
葉酸は細胞の中の核酸(DNA・RNA)の生成に関与しているため、骨髄の中で細胞分裂が行われることで生成される赤血球を作ることにも、大きな役割を持っているのです。

3.ホモシステインの分解

血中のアミノ酸の一種であるホモシステインを分解してくれる役割があります。
血中のホモシステイン濃度が濃いと動脈硬化になりやすく、心疾患の心配もあります。

通常、葉酸とビタミンB6、B12が足りている状態であれば、ホモシステインは体内で分解(リサイクル)されて皮膚の形成に関わるシステインへと作り替えられます。
葉酸などが不足していると体内で分解できないためホモシステインの血中濃度が高まり、コレステロールと共に血管の壁に溜まって動脈硬化になってしまいます。

葉酸の効果が期待できる症状

症状で効果が期待できるのは、主に「認知症」「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」「脳血管疾患」の3つあります。

認知症と骨粗しょう症は、いずれもホモシステインとの関係から研究が進められているところで、具体的な摂取方法とそれによる予防効果については現時点では言及できません。

その2つに対して、脳血管疾患には明らかに効果があると言われており、動脈硬化を含め血液中のホモシステイン濃度が増えてくると血管が詰まりやすくなり、脳血管疾患などの病気を発症してしまいます。
葉酸不足になるとホモシステインを分解できないという事実から、葉酸量とホモシステイン量に相互関係があることがわかっています。

このように、葉酸にはさまざまな病気の予防効果も期待できるので、中高年の方にも必要な栄養素です。

病気・症状に

効果が期待できる症状葉酸の働き・効果
うつ・ストレスの改善、緩和自律神経を整える
動脈硬化の予防ホモシステインの血中濃度を下げる
痛風の改善、予防尿酸を作る酵素の働きを抑制する
脳梗塞の予防造血作用により血流を正常化する
貧血・鉄欠乏症の予防、改善赤血球の量と質を正常に保つ
高血圧の予防、改善血流の正常化により血管の拡張が期待できる
肩こりの改善血行を良くして筋肉をほぐす

美容・健康に

効果が期待できる症状葉酸の働き・効果
美肌血流を良くし、細胞分裂を活発化させることでより良い肌の状態にする
生理不順の改善ホルモンバランスを正常に保つ働きがある
ダイエット血流改善で冷えをなくし、基礎代謝を上げる
便秘解消腸内の細胞分裂を活発化し、粘膜の状態を良くして腸の動きを良くする
薄毛・抜け毛の予防、改善 髪のハリ、つや細胞分裂の活発化と血行促進により、毛を作る細胞や頭皮の状態を良くする

妊娠前から産後にかけての葉酸の効果

データとして、また研究結果としてはっきりといえるものから、現段階でそう考えることができるというものまで、葉酸の効果として挙げられているものは多くあります。

妊活中の葉酸の効果

受精卵の着床を助けたり、胎児の障害リスクを軽減したりします。
特に神経管閉鎖異常のリスク減の効果については妊娠前からの摂取が重要です。
この効果のためには受精し、細胞分裂が始まる時から体内の葉酸が充分にあることが必要。
そのために妊娠の計画や妊娠する可能性がある時からサプリで確実に摂取していくことを推奨されています。

妊娠中の葉酸の効果

妊娠初期では神経管閉鎖異常のリスク減がありますが、他にも胎盤の早期剥離を予防したり、胎児の発育が遅れたりすることの予防効果などがあります。
妊娠初期または初期を過ぎた中期や後期でも、葉酸は貧血予防や高血圧症の発症を抑え、妊娠中毒症を予防する効果を発揮します。

流産・早産防止の効果はある?

流産の原因が葉酸不足による赤ちゃんの先天性奇形によるものならば、ある程度の効果は見込めます。
しかし、葉酸の効果で流産を予防できるかどうかの研究は完全になされていないため、現時点では予防効果ははっきりしていないとしか言えません。
ただし、妊娠をする1年前から葉酸サプリを摂取した人はしていない人に比べて、早産リスクが50~70%低減したというデータは認められています。
この調査結果は、年齢・人種に関係なく当てはまると報告されています。

出産後・授乳期の効果について

妊娠期だけでなく出産後の女性にも通常より多くの葉酸摂取量が必要になります。
摂取量の基準として必要とされているのは、通常時の必要量は200μg(マイクログラム)、推奨量は240μgです。
さらにそれに加えて推奨量に付加量があり授乳期でも通常の推奨量240μgにプラス100μg多く摂取することがすすめられています。

授乳期にも多くの葉酸量が必要な理由は、赤ちゃんが母乳から栄養素を補給しているから。
ママの体内の葉酸量が、そのまま母乳の栄養成分に響いてくるはずなので、子どもの発育のためにもこの時期の葉酸摂取はとても効果があるといえます。

母乳を与えるのが難しい場合は、調整乳(特別用途食品「乳児用調製粉乳」)でも大丈夫です。
国内で販売されている調整乳の栄養成分は限りなく母乳に近づけてあり、さらに必要な栄養素を一部増やしています。

ただし、免疫物質については母乳からしか与えられません。
少量でも構わないので初乳を与えて、必要な栄養分は調整乳で与えるという方法をとってみてください。

男性と葉酸の効果

夫婦で会話する画像

アメリカのカリフォルニア大学研究チームのデータでは、葉酸を多く取り入れている男性は少ない男性に比べて、精子の染色体異常の割合が20~30%低いことがわかりました。
逆をいうと、葉酸の摂取量が少ない男性は、異常が多かったということです。
妊娠希望の夫婦が妊活をする場合、女性だけでなく男性も葉酸を積極的に摂取するのがオススメです。

葉酸はDNAを正確にコピーすることに関与しているので、精子の染色体異常を防ぐというメリットがあります。
正常な精子を多くすることで妊娠しやすい状態にすることができるので、不妊で悩んでいる人には特におすすめです。
通常の摂取推奨量(240μg)よりも不足しないように気をつけておくことが大切です。

夫婦での妊活への取り組みは、男性の葉酸の必要性を知って夫婦一緒に葉酸摂取を習慣にしましょう。

葉酸の吸収を阻害するもの

葉酸を必要量摂取していたとしても、酒やたばこを摂取すると体内でそれらを分解、処理するために使われてしまい、葉酸が不足してしまう可能性があります。

葉酸を含む食べ物と一緒に食べてしまうと吸収を妨げてしまう相性の悪い食べ物もあります。
現在、キャベツやインゲン豆、レンズ豆、オレンジが葉酸と相性が悪いことがわかっています。
飲み物では、緑茶や紅茶、コーヒー、ビール、ワインといったタンニンを含む飲み物が葉酸と相性が悪いです。
別の時間帯に食べるようにする、葉酸を含む食べ物の量を多くするなどの対策がおすすめです。

葉酸が不足するとどうなる?

葉酸不足だと

粘膜や免疫細胞が良くない状態となり、口内炎や食欲不振、下痢などの症状が現れることがあります。
食欲不振や下痢が起こるとますます葉酸不足になってしまう可能性があります。

葉酸不足が続くと…葉酸欠乏症に

巨赤芽球性貧血(悪性貧血)や動脈硬化、神経障害などの発生リスクが高まります。
巨赤芽球性貧血(悪性貧血)は通常の貧血と異なり、葉酸とビタミンB12が不足した事で正常ではないDNAの赤芽球が作られて起こる貧血です。

妊娠中においては、葉酸が不足して細胞分裂が正常に行われない事で胎児の神経管閉鎖障害(無脳症二分脊椎症)のリスクが高まるため、特に葉酸が不足しないように注意する必要があります。

葉酸を摂り過ぎたらどうなる?

食べ物からの摂取のみでは過剰になることは考えにくいため、特に摂取量を気にしなくても大丈夫です。
例え摂取しすぎたとしても、水溶性ビタミンなので必要分以上は尿とともに排出されることになります。

ただし、サプリを利用する場合は体内吸収率が高いため摂取量に注意が必要です。
副作用の心配のないとされる最大摂取量は1日1000μgまで。
葉酸を摂り過ぎると、亜鉛吸収率の低下やビタミンB12 不足が起こる可能性があります。

抗がん剤などの一部の医薬品との併用でアレルギー症状が起こる事もあります。
サプリを中心に摂取をする場合は最大摂取量を超えないように、飲む量や回数を確認しておくと安心です。

syufeelはココに注目!

葉酸の積極的な摂取をおすすめしたい方

  • 妊活中の男女、妊娠中・授乳期の女性
  • 発育が盛んな成長期の子供
  • 生活習慣病を予防したい方
  • 肌荒れが気になる方

胎児における神経管閉鎖障害の発症リスクを軽減させるためには、妊娠前から妊娠初期にかけての葉酸の摂取が重要であると母子手帳に記載されていることもあり、葉酸についての認知率が高いのは妊活中・妊娠中の女性が中心。
「葉酸の重要性」については、妊活中の男性にも同様に当てはまるので、男性の積極的な摂取も望まれています。
男性の精子に異常があると、胎児に先天性障害を引き起こす場合があり、受精卵が着床する前の胚の時期に残念な結果となることも。

また、発育が盛んな成長期の子供はたくさんの葉酸を消費するため、葉酸不足によって巨赤芽球性貧血(悪性貧血)を起こしやすいと考えられています。
葉酸が多く含まれている野菜が苦手な子どもの場合は、不足しないように注意しましょう。

さらに葉酸は、肌細胞や頭皮に働きかけて新陳代謝を活性化するので、美肌や美髪作りなどに役立つ美容効果も。
その他にも、血流改善や造血作用によって、動脈硬化や脳梗塞を予防する効果が期待できるので、成人の男女ともに中高年になっても摂り続けたい栄養素です。

効率よく効果を得るための摂取方法

日本人の食事摂取基準で推奨されている食事からの1日の葉酸摂取量は、妊娠期で480μg、授乳期で340μg。
厚生労働省は、神経管閉鎖障害の発症率を低下させるため、妊娠の可能性のある女性には、食事からの必要摂取量にプラスして、1日に400μgの栄養補助食品からの葉酸摂取を推奨しています。

葉酸が多く含まれる植物性食品は、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜や果物、動物性食品では、鶏・豚・牛の肝臓(レバー)。
しかし、食品由来の葉酸は、体内で消化吸収されてから利用されるまでの生体利用率が低く、50%とされています。
一方、サプリメントや葉酸添加食品に含まれている葉酸は、生体利用率が85%と高い「プテロイルモノグルタミン酸」という型の葉酸です。

普段から口にする、パンや卵などに葉酸を添加し、栄養強化された葉酸添加食品は、その食材に元々含まれる栄養素も同時に摂取できるというメリットがあります。
葉酸が属しているビタミンB群は(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン)、お互いに協力し合って効果を発揮するので、一つの栄養素を単独で摂取するよりも、同時に摂取する方が体に良い影響を与えられるのです。

日頃からバランスの良い食事を基本とし、葉酸添加食品を上手に利用して、食品と栄養補助食品の両方から、葉酸の摂取基準を満たせるように心掛けましょう。
葉酸サプリメントと葉酸添加食品を併用する場合には、葉酸の含有量を確認し、1日の耐用上限量(1000μg)を超えないよう注意が必要です。

専門用語解説

DNA・RNA

DNAは、細胞内にある遺伝物質で、遺伝に関する情報を持っている核の部分。
この遺伝情報を、同じく細胞内の核となるRNAにコピーして細胞増殖を繰り返し、身体機能を作っていきます。

神経管閉鎖異常

背骨部分の脊椎内に入るべき神経組織が出てしまい、神経管が閉じていない状態。
胎児の時期に発症する先天性の異常です。

妊娠中毒症

「妊娠高血圧症候群」のこと。
妊娠前の血圧は正常値であった人が、妊娠20週から産後12週の期間に、高血圧を発症することです。

μg(マイクログラム)

重さの単位。
1μgは、1g(グラム)の100万分の1の重さになります。

調整乳

赤ちゃんが、母乳の代わりに栄養摂取する「粉ミルク」のこと。
基本的な成分と分量が、法律で決められています。

染色体異常

染色体は、細胞内にあり遺伝情報が記録されている部分。
異常があると、着床前の胚の時期や胎児の時期に残念な結果となる可能性があり、病気や奇形を持って産まれてくる場合もあります。

水溶性ビタミン

水に溶ける性質をもつビタミン類。
ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ナイアシン、パントテン酸、葉酸(ビタミンM)、ビオチンの9種類あります。
尿とともに排出されやすく、体内にためておくことができません。

無脳症

胎児の段階で神経細胞が正常に発達せず、脳の組織が作られません。
治療は困難で致死的となってしまう、重い神経管欠損症の一つです。

二分脊椎症

背中部分にある脊柱の骨が閉じずに、脊髄などの神経層が突出している状態。
症状の程度には幅があり、重い場合には下半身不随になることも。

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記事を書いた人

東大阪大学短期大学部教授
源伸介 (みなもと しんすけ)
東大阪大学短期大学部教授 源伸介(みなもと しんすけ) 栄養学の観点から『葉酸』の認知向上や摂取推奨活動を行い、『葉酸たまご』など食品の生理機能の研究・開発実績のある学術博士。
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